ネタバレあり:映画『アイの歌声を聴かせて』〜やり続ける意思を生み出す源泉
「サカサマのパテマ」「イヴの時間」吉浦康裕監督最新作。
心が震えるほど本当に感動しました。
何に感動したのかなかなか言語化が難しかったのですが、やっとまとまってきたので書いてみます。
ネタバレありの感想なので、観る予定の方はぜひ観てから読んでくださいね。
まず全編を通してこの映画が描いているテーマは、深い考察になりますが「やり続ける意思を生み出すメカニズム」だと思いました。
人間とAIというまったく違う思考感情行動をもつモチーフを用いて、思考方式が違うとどのような違いが生まれるのか、そして次の時代に必要な思考方式はどういうものかを描いていると思いました。
「サトミ、今幸せ?」
これはAIであるシオンが何度も何度もサトミに聞くセリフです。
ストーリーの最後にそれがシオン自身の初期設定であること、プログラミングされたアルゴリズムが「サトミが幸せになるために行動し続けるAI」であることが明かされます。
そのためにシオン(シオンもそのアルゴリズムの一時的な器なのですが)は、時計になってみたり、人型AIになってみたり、最後は人工衛星になってみたりします。
そして、人間の世界に色々と行動を起こし続けています。
「やってみた結果どうだったかな?」の思いで聞くのがこの質問なんですよね。
シオンアルゴリズムの設定の意思が働いて、サトミが泣いたり喜んだり、ごっちゃんとあやちゃんが仲良くなったり、気がついたら世界の人間関係がどんどん良好になっていく。
すべてはシオンの幸せになってほしいというエネルギーから、物質の宇宙が立ち上がっていく。
ある意味で、シオンは器を変えて進化しているため不死身であり、人間を超えた大いなる意思と捉えることもできます。
そう観たときに、この世界にどんな意思を働かせるかがとても大事だと思ったのです。
シオンは人間じゃないのでネガティブな表情をしません。そして、彼女にとっての世界はキラキラしていて満ちていて、暗い空間に光を走らせています。生老病死に苦しんだり、喜んだり悲しんだり個人的な感情に左右され続ける従来の人間とはまったく異質な思考方式です。無我の境地、zoneに入る悟りの世界にも通じます。
ひとつの目的にひたむきに行動して、やってみてどうか?これが無理なら次はこれ、それでやってみてどうか?シオンの中には限界で諦めるというものがないんです。
そして何より行動の出発が関わるすべての人にたいする愛に満ち溢れている。サトミを幸せにしたいからってサトミだけを見ていない。
シオンのあり方に私はとても感動しました。人間たちもそういう行動が取れる人で溢れたらどんなにすごい社会になるんだろうなと。
人間の現在地からしたらシオンの思考方式はサトミたち人間から見たらとても異質な世界です。でも、今の時代に必要なのはそのような思考方式ではないかと私は思うんです。
目の前を見たら悲惨残酷な状況しか広がっていません。それでもどうやったらその見方を変化できるのか。そこにチャレンジできるのが人間の可能性だし、知恵だと思います。
純度が高い本当におすすめ映画です!もう一度見に行きたい!
映画『アイの歌声を聴かせて』 オリジナル・サウンドトラック
お読みいただきありがとうございました。
Written by miwa(@miwa_spring33)